日本昔ばなし 十六人谷

まんが日本昔ばなしの怖い話

日本昔話の中でも、かなり恐怖度が高いと思われるこの作品。

名作ホラーといっても過言ではないように思える。

あらすじ

 

黒部の渓谷、富山県のお話。

むかし、むかしのこと。

おじいちゃんが、室内に座っている。

目の前には色白な若い娘が座っている。

おじいちゃんが娘に話しかける。

「黒部の山は、猟をするにはいい。動物がたくさんいる。わしら木こりでも、ときには猟に出たんじゃよ」

そこに、中年女性がおにぎりを持ってきた。

「おじいちゃん、ご飯持ってきたよ」

中年女性はおじいちゃんの実の娘だろう。

中年女性の目には、その部屋におじいちゃんが一人いるだけ。

そう。若い女性の姿が見えていないのだ。

中年女性は、部屋におにぎりを置くとすぐに立ち去った。

おじいちゃんは、若い娘にまた話しかける。

「お前が男だったら、山に連れていきたいんじゃが」

ここでおじいちゃんの若い頃の思い出話に入る。

おじいちゃんが若い頃、一人の仲間と山に入った。

その一帯は恐ろしい噂があり、山刀を持っていないとウワバミ(大きな蛇のこと)に襲われるというものだった。

若き日のおじいちゃんは仲間に言った。

「お前、山刀持ってきてないじゃねえか」

仲間は笑う。

「おらはウワバミなんか怖くないから。あんなものは迷信だ」

一足先に山小屋に戻った若き日のおじいちゃん。

少しすると、仲間も小屋に戻ってきたのだが。

戸を開けた仲間の後ろに大蛇がいるではないか。

絶句するおじいちゃん。

次の瞬間、小屋が壊れた。

気が付くと、仲間の姿は消えていた。

あたりには、蛇の匂いが残っていた。

「山で恐ろしいのは、ウワバミなんじゃ」

若き日を回想しながら、おじいちゃんは言った。

「だがな。ウワバミより恐ろしいことも山にはある。わしが仲間(ウワバミに殺された)の通夜の夜、家に帰ってみるとそこに女がいた」

若き日のおじいちゃんが自宅に帰ってみると、暗がりに女がいる。

色の白い若い女だ。

「誰だお前は」

驚く若き日のおじいちゃん。

「聞くところによると、明日は木こり仲間たちと山に入るとのこと。その谷の柳の木だけは切らないでください」

女が言った。

「それは一体どういうことだ? おら一人で行くわけじゃない。みんなで行くんだ。おらに決定権はない」

若き日のおじいちゃんは答えた。

女は「お願いします」と、頭を下げて部屋から出て行った。

翌日。

15人の仲間たちと山奥の谷に入った。

すると、谷の奥に女の姿が見えた。

昨夜、自宅にいた女だ。

どういうことだ、なぜ女がこんな山奥にいる?

若き日のおじいちゃは混乱した。

見ると、谷には見事な柳の木が生えている。

樹齢数百年の立派な柳の木。

岩に大きく根を張っている。

嫌な予感がした若き日のおじいちゃんは、仲間たちに懇願した。

「その柳の木だけは切らないでくれ」

まだ若手のおじいちゃんに決定権はない。

仲間たちは、おじいちゃんの言うことを無視して柳の木を切ってしまった。

「やめれー」

おじいちゃんの叫び声だけがむなしく響く。

夜。

小屋に戻って食事をすると、木こりたちはいつの間にか眠ってしまった。

物音を聞いて、若き日のおじいちゃんは目を覚ました。

「誰だ?」

小屋の中には、昨夜の女がいた。

女は、眠っている木こりたち一人一人にキスをして回った。

キスをされた木こりは舌を引き抜かれて死んでしまった。

若き日のおじいちゃんは、すさまじい眠気と闘いながらその様子を見ていた。

ついに、全員の木こりが死に、おじいちゃんの番になった。

女はおじいちゃんの首に手をかけ言った。

「あんたに頼めば、こんなことにならずに済むと思っていたのに」

おじいちゃんは震えながら、手を伸ばし刀を掴み、女に切りつけた。

悲鳴をあげる女。

その間に逃げ出した若き日のおじいちゃん。

なんとか、生きて帰ることができた。

「あれから50年経つが、あの女は恐ろしいほど美しい女じゃった。わしは、あの女が忘れられん」

目の前の娘に話しかけるおじいちゃん。

そこに、また中年の女性がその部屋に入ってきた。

「おじいちゃん?」

部屋を開けて、中年女性は絶句した。

おじいちゃんが、舌を引き抜かれて死んでいたのだ。

死んでいるおじいちゃんの顔は、どこか恍惚としていた。

この事件のあった谷のことを、十六人谷と呼ぶそうな。

 

感想

 

おじいちゃんがしきりに話しかけていた娘こそ、あの晩見た恐ろしい女だったというオチ。

50年も経過してから、女はどんな思いでおじいちゃんのもとに来たのだろうか。

もしかすると、若き日のおじいちゃんのことを女は好きだったのかもしれないな、なんて思ってしまった。

だからすぐに殺さずに、寿命ギリギリまで生きてもらい、もうすぐ寿命というタイミングで女が殺しに来たのかな、と。

女は人間じゃないんだから、殺すタイミングなんていくらでもあっただろうに。