日本昔ばなし 三本枝のかみそり狐

まんが日本昔ばなしの怖い話

最後まで読んでもらえるとわかるが、この作品はいろんな意味で怖い。

昔話ならではというか、怪談話の中に人の怖さも感じることができる作品だ。

 

あらすじ

 

むかしむかし、ある村の村はずれの三本枝という竹林に人を化かすキツネが出るという噂があった。

村人たちが集まると、そのキツネにひどい目に遭わされたという話をしていた。

「あの三本枝には日が暮れてからは近づいてはいけない」と、多くの村人がキツネを恐れていた。

だが、ヒコベエという村の若者はキツネを恐れていなかった。

「馬鹿らしい。オラはキツネなんかにゃ騙されねえ。キツネを見つけたら鍋にして食ってやる」

そう言うと、次の日の夕方、ヒコベエは三本枝に向かった。

はなから迷信だと決めつけて信じていないものだから、キツネが怖くないヒコベエ。

竹藪をずんずん進む。

すると、遠くで人が歩いているのが見えた。

「日も落ちてるのに、なんでこんなところに赤ん坊を背負った女が歩いてるんだ?こいつは例の三本枝のキツネに違いない。キツネのやつ、女に化けてオラを騙そうとしても無駄だぞ」

ヒコベエは、女の後を尾行した。

女はしばらく歩くと、一軒の家の前で立ち止まった。

「おっかあ、泊りに来たよ」

女がそう声をかけると、中からは老婆が顔を出す。

「おお、赤ん坊も一緒か?はよ、入りなさい」

ヒコベエは思った。

「キツネが、ばあさまを騙そうとしている。オラが行って、ばあさまを助けてやらねば」

ヒコベエは、その家の中に入っていった。

「ばあさま、騙されるな。そいつは、あんたの娘じゃねえ。キツネだ。ばあさまが今抱いてるのは、赤ん坊ではねえ。畑の大根かなにかだ」

キョトンとする、老婆。

「おめえ。何寝ぼけてるだ?これはオラの娘と孫だ。おめえは、勝手に人の家に入ってきて何言ってるだ」

「よし。オラがこいつらがキツネだということを証明してやる」

そう言うと、ヒコベエは老婆から赤ん坊をひったくった。

泣き叫ぶ赤ん坊。

ヒコベエは燃え盛る囲炉裏の火の中に赤ん坊を投げ入れた。

「やめろー」

絶叫する老婆。

ところが赤ん坊は大根に姿を変えるどころか、そのまま焼け死んでしまった。

人を殺してしまったヒコベエは恐ろしくなってその場を逃げ出した。

老婆は怒り狂った。

「人の孫を殺したあの男。絶対に許さない。殺してやる」

逃げるヒコベエ。

包丁を持って追いかける老婆。

逃げるヒコベエは、山寺にたどり着く。

寺の中に逃げ込むと、和尚に助けを求めた。

「和尚様お助けください。私はキツネと間違えて、人間の赤ん坊を殺してしまいました。今、そのばあさまに追われています。助けてください」

「わかった。それでは、わしがばあさまをなだめてみよう。お前は隠れていなさい」

しばらくすると、老婆が寺に入ってきた。

「ここに男が来ただろう?その男はわしの孫を殺した。どこにいるか教えてくれ」

和尚は答える。

「落ち着きなさい。その男も悪気があったわけではないだろう?許してくれないか」

「許せねえ。あいつの首をちょん切るまではゆるせねえ」

「ばあさま、ここはひとつ。私に任さてくれないか。悪いようにはしないから」

「わかった。頼んだぞ坊様」

何とか納得してくれた老婆は帰っていった。

 

和尚と二人きりになったヒコベエは、お礼を言った。

「何とか命が救われました。ありがとうございます」

和尚は言う。

「お前は人を殺しておる。だからもう坊主(出家するという意味)になるしかない。そのためには、髪の毛をそり落とすしかない」

そういうと、和尚はカミソリを持ってきてヒコベエの髪をそり始めた。

ところが、カミソリの切れ味が悪く、凄まじい痛みだった。

「いたい。いたい。坊様いたい」

髪をそり終えるころには、頭は血だらけになってしまった。

和尚は、本堂に布団を敷きヒコベエを寝かせてくれた。

明け方に起きてみると、そこは藪の中だった。

ヒコベエは葉っぱの中に眠っていたのだ。

「これはオラとしたことが。キツネに騙されてしまった。考えてみれば、あのばあさまも坊様もみんなキツネだったのじゃ」

ヒコベエは血だらけの坊主頭に布を巻き、下山した。

 

それからというもの、ヒコベエはどんなときも見栄を張ったり、強がりを言ったりしなくなったそうな。

 

感想

 

この話の最も怖いところはどこだろう。

私は思う。

ヒコベエが、本当は人を殺していたかもしれないというところだ。

和尚がキツネだったことは間違いないだろう。

寺も布団も消えていたことは事実なわけだからキツネと見ていい。

でも、おばあさんや若い女、赤ん坊はどうだろう。

キツネだったという確証がないまま終わっているのだ。

そう、山に暮らすおばあさんの孫を、ヒコベエは本当に殺しているかもしれないということになる。

恐ろしい話だ。

それに、もしも仮に、おばあさんたちもキツネだったとしよう。

だとしても、ヒコベエは泣き叫ぶ赤ん坊を火の中に入れたことになる。

その人間性はどうなのだろう。

最初から物事を決めつけ、身勝手で残虐な行動をとる。やはり、ヒコベエには恐ろしさを感じてしまう。